こんにちは。栖山 依夜(すやま いよ)です。
私は2024年にASD(自閉症・アスペルガー)の診断を受けています。
皆さんは、ASDと聞くと最初にどんな印象を受けますか?
「空気が読めない」「冗談が通じない」「こだわりが強い」といった、コミュニケーションが難しい人のようなイメージがあるのではないでしょうか。
しかし、ASDに「気を遣いすぎる人」がいるということはご存知でしょうか。
実は、ASDにもさまざまなタイプが存在しているのです。
今回は、世間的なASDのイメージとは異なる「ASD受動型」について紹介します。
この記事を読めば、「ASD受動型」の特徴や他のASDとの違いについてわかります。
・ASDの診断を受けたが、あまりピンと来ていない
・他人に合わせすぎてしまって辛い
・無理をしすぎて精神的に参ってしまったことがある
・ASD受動型のことをもっと知りたい
「自身がASDかどうかわからない」「一度検査を受けてみたい」といった方には、こちらの記事もおすすめです。
ASD受動型ってどんな人?

ASD受動型は、具体的に以下のような特徴があります。
①自己表現が苦手
②流されやすい
③ASDであることが気づかれにくい
基本的に、ASD受動型は受け身なことが多く、周囲に合わせるような行動が特徴的です。
そのため、特徴だけを聞けば、「あれ?私にも当てはまるかも。」と思う方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。
実はその「もしかしたら?」が、ASD受動型のデメリットでもあるのです。
受動型の人は、一見すると「ただの大人しい人」のように思われることも多いため、発達障害であることが気づかれにくいといわれています。
また、ASD特有の「我の強さ」が目立たないため、トラブルを起こすこともほとんどありません。
これまで注目されてきたASDの特徴を踏まえると、受動型がASDだと気づかれにくいのも納得がいきますよね。
受動型は、とにかく人に合わせようと無理をすることが非常に多いです。
慣れない場所で過剰適応してしまうことも多く、二次障害が問題になりやすいといわれています。
そんな受動型さんが、生きやすくなる方法はこちらでまとめています。
ちなみに男女の割合としては、女性が多いそうです。
ASDらしい特徴は何がある?

ASD特有の症状が目立ちにくい受動型ですが、ASDの特徴が目立つ部分もあります。
その特徴としては、「社会性の障害」と「こだわり」があります。
社会性の障害
「社会性の障害」は、簡単にいうと、周囲の状況に合わせた行動が取れないという症状です。
ASDでは主に、思ったことをすぐに言ってしまう、暗黙の了解が理解しづらいといった症状がよく挙げられていますよね。
しかし、受動型の症状で表れる「社会性の障害」は、一般的なASDとは少し異なる部分があります。
それが受動型の特徴でも挙げた、「自己表現の苦手さ」です。
自己啓発本や就職活動で、「軸をしっかりと持ちましょう。」「自分の軸がブレないように!」という言葉を見かけたことはないでしょうか。
受動型の人は、基本的にこの軸が曖昧だといわれています。
自分の軸がブレていると、自分が一体何をしたいのかがハッキリとしません。
軸が曖昧なまま、自分のことを説明するのは誰でも難しいですよね。
しかし、受動型の人はその「難しい」という気持ちを周りに表現するのがとても苦手です。
その結果、周りに合わせて行動することが増え、自分の意見を発する機会がどんどん少なくなってしまうという悪循環に陥ってしまうのです。
次によく表れる症状が「言語化の苦手さ」です。
これはASD特有の脳の障害で、中枢性統合という部分が関係しているそうなのですが、これがとにかくASD受動型を苦しめる要因でもあるのです。
中枢性統合とは、「物事全体を把握する能力」のことを指します。
ASDやADHDなどの発達障害の人は、この能力が弱いとされています。
「言語化」といっても捉え方はさまざまですが、まず思いつくのは自分の考えを言葉にする能力といったところでしょうか。
察しの良い方は、もうお気づきかもしれませんね。
受動型が「自分の意見を言わない」のは、言わないのではなく、言えない状態なのです。
私の経験としては、この「言えない」状態は、会話中に頭の中にある、数千個の引き出しの中から、適切な物が選べない感覚に近いです。とにかく、言葉が出てきません。
今思えば、私は就職活動の時に、かなりASDの特性に振り回されていたように思います。
それも、人生で一番苦戦したと言っても過言ではないほど。
「自分の軸」がなかなか定まらず、書類選考で落とされ続け、せっかく良いところまでこぎつけた面接では、余計なことを言ってしまい、あと一歩でお祈りメール・・・なんて経験が何度もありました。
余計な発言というのは、発達障害ではあるあるかもしれませんね。
「もっと先のことを見据えて行動すべきだった」とその時は思うのですが、他のことで頭がいっぱいいっぱいになると、いつの間にか忘れてしまい、自分を責めるということの繰り返し。
この時の私の行動は全てASD受動型の特徴に当てはまっていました。
こだわり
ASD受動型にも「こだわり」があるといわれています。
ASDという特性上避けられない「こだわり」ですが、ここでも受動型は他のタイプとは異なった形で表出します。
それが、こだわりを我慢してしまうという行動です。
「今、ここでこだわりを出しては周りに迷惑がかかるな」
「自分だけが我慢すれば丸く収まることだから」
といったような、自分の欲求よりも周囲への反応が先に表れ、とにかく我慢してしまうのです。
同じ「こだわり」という特徴ではありますが、他のタイプがストレス発散につながるような行動を起こすのに対し、受動型は、自分の気持ちを内側に押さえ込んでしまいます。
ASDの有無にかかわらず、ストレスを溜め込み続けることは、健康にも悪影響を及ぼすといわれています。
最初は「我慢すれば」という気持ちだけで、なんとか抑えることができるのですが、この我慢が毎日続くと、今度は身体に症状が現れてきます。
私が適応障害になってしまったのは、まさにこの状態だったように思います。
我慢をせず、適度にストレス発散することが大事!とは言いますが、ASDにとっては、その「適度」や「力の抜き方」を見つけることが、本当に難しいのです。
そのため、ASD受動型の人は、ストレスでの二次障害には特に注意が必要になってきます。
ASD受動型の子ども時代って?

ASD受動型の子ども時代は、おそらく「ただの大人しい子」というふうに映ることが多いです。
私自身、ASDだと診断されたのが20代と遅めでした。
周りの人どころか、本人ですらも「ASDであること」に気づいていない可能性もあります。
特に学生生活では、受動的な態度が「いい子」と捉えられやすい傾向があります。
黙って授業を聞いている生徒が、先生にとって「いい子」となるのは、想像に難くないですよね。
私も例に漏れず、小中高と「大人しい生徒」でした。
通知表には、いつも「もっと手を挙げて発表してみよう」「大きい声を出してみよう」といった言葉が書かれていました。
こうした経験からも、子ども時代にASD受動型の傾向を見つけ出すのは、かなり難易度が高いのではないかと思います。
私の経験上、ASD受動型の症状が顕著に出てくるのは、アルバイトや就職などの社会に出るタイミングからだと思っています。
特にASDにとって難易度が高いのは、以下のようなものです。
①臨機応変な対応
②上司・部下とのコミュニケーション
③ビジネスメールや電話の対応
④「あれ」「あの書類」「適当に置いといて」「自分で考えて」といった曖昧な言葉
ASDはイレギュラーなことが起こると、パニックになる確率が格段に高くなります。
悲しいことに、一般的に求められる社会人と、ASDの特性はかなり相性が悪いです。
就職活動で、求められるのは常に能動的な存在なんですよね。
臨機応変な対応と、曖昧な言葉が難しいASDの人にとって、慌ただしい社会人生活はとにかく苦しいことだらけです。
特に「受動型」の人は断れない、はっきり言えないストレスがかかる状態が続きやすくなります。
では、どうすればASD受動型は生きやすくなるのでしょうか?
次回はASD受動型の「上手く生きる術」について、書いていきたいと思います。