こんにちは。栖山 依夜(すやま いよ)です。
私は2024年にASD(自閉症・アスペルガー)の診断を受けています。
春からの新しい環境にも少しずつ慣れてくる時期になりましたね。
いろんなことが見えてきて、人間関係にモヤモヤを抱え始めた方も多いのではないでしょうか?
皆さんは「人間関係リセット症候群」という言葉をご存知でしょうか。
現代病の一つであり、「何の前触れもなしに突然連絡を絶ってしまう」という、なかなかに厄介な症状が特徴です。
最近では、関連する書籍が出てきたり、ネットニュースにもなったりと、世間でも取り上げられるようになってきました。
「かまってちゃん」や「めんどくさい」という声も耳にしますが、私も何度か人間関係をリセットした経験があります。
この困った癖の原因は、ASD特性と自己肯定感の低さから来るものでした。
今回は、ASD当事者であり、人間関係リセット症候群の経験者として、リセットを繰り返してしまう理由やASDとの関連性について紹介したいと思います。
・人間関係を断ち切ってしまいたいと思うことがある
・突然何もかも嫌になったことがある
・SNSやLINEを返すことが億劫になっている
・完璧にできない自分が嫌になっている
・人間関係が続かないことが何度かあった
私自身がASDのため、当事者視点から書いている部分も多くあります。
しかし、ASDであるかどうかに関係なく、人間関係に疲れてしまったことのある方は沢山いらっしゃると思います。
ASDであってもなくても、人間関係に疲れてしまった方、人間関係リセットをしてしまった経験がある方には、ぜひ最後まで読んでいただきたいです。
人間関係リセット症候群とは?

人間関係リセット症候群は、その名の通り、今まで築き上げてきた人間関係を突然リセットしてしまうことが特徴です。
「症候群」という名前がついていますが、正式な病名ではありません。
主な行動としては、以下のようなものがあります。
①SNSのアカウントを突然消去する
②連絡先を全て削除する
③突然連絡が返ってこなくなる・音信普通になる
この行動が見られたら、「人間関係リセット症候群」の兆候があると考えてよいでしょう。
リセットされた側としては、突然のことで驚いてしまいますよね。
いつも話していた人が、何も言わずに突然消えてしまったら、何があったのかと心配してしまいます。
もしこれが、会社員や連絡を取らなければいけない仕事に就いている人だったら?
考えただけで身の縮む思いがしますね・・・。
なぜリセットをしてしまうのか?

リセットを繰り返してしまう人は、なぜ辞められないのでしょうか?
主な原因としては、4つ考えられます。
生まれ変わりたいという気持ち
原因の一つとして、リセットをすることで「生まれ変わろう」と考えている場合があります。
この気持ちを抱えている人は、嫌な人や苦手な人がいるものの、直接不満を言えない場合が多いです。
生まれ変わるという意味で近いものとして、「大学デビュー」という言葉がありますよね。
個人的に、「大学デビュー」は人間関係リセット症候群とかなり近い考え方だと感じています。
どちらも根っこにあるのは、「生まれ変わりたい」という気持ちです。
要は「生まれ変わる」ために、周囲との付き合いを辞めるかどうかの違いなのですが、この差はかなり大きいと思っています。
「人間関係リセット症候群」になってしまっている人の多くは、自己肯定感が低い人が多いです。
私自身も、自己肯定感がかなり低い方なのですが、周りの目を気にしてしまうほど、リセットという選択肢が出てきやすいような気がします。

新しい自分になるために、全てを捨てる必要はないのですが・・・。
過去の自分を恥じている
過去の自分に対してマイナスイメージを持っている場合でも、リセットの理由になることがあります。
誰でも、「黒歴史」となるような過去は、思い出したくないですよね。
そんな黒歴史が消せない!となったら、どんな気持ちになるでしょうか。
リセット癖がある人は、過去の嫌な記憶が強く残ってしまいやすい傾向があるといえます。
例えば、ちょっとした失敗や嫌な思い出などが挙げられます。
こうした記憶は時間が解決してくれると思いきや、そう簡単にはいきません。
「その出来事に関わった人たちに汚点を残してしまった」と感じてしまい、居ても立っても居られない状態が延々と続きます。
例えるなら、自作の小説を投稿したサイトの存在を思い出したのに、パスワードが思い出せないといった感じでしょうか。
「自分にとってマイナスだった過去を知っている」という事実が、リセットする理由になってしまうのです。
この場合は、好き嫌いに関係なく、その時期に繋がっていた人々を断ち切るというパターンが多いです。
私はまさにこのタイプでした。

これも自己肯定感の低さが影響していますね・・・
白黒思考(0-100思考)
白黒思考(0-100思考)を持っている人も、比較的リセットの原因になりやすいと考えられます。
ASD(自閉スペクトラム症)の方はこのクセに悩まされた経験も多いのではないでしょうか。
白黒思考があると、「一旦置いておこう」という考え方がなかなかできません。
物事をハッキリさせたいため、自分にとってマイナスだと感じる出来事があれば、シャッターを閉じてしまいやすいのです。
たとえば、職場や学校の人間関係においてありがちな例として、第一印象の悪さがあります。
一般的に、第一印象で人を捉えようとする行為はあまり好まれません。
特に、会社などでは、比較的長い期間在籍することが多いため、苦手な人とも上手く付き合っていく必要があります。
しかし、これは0-100思考の方にとって、かなりハードルが高いことでもあります。
私自身、ふとした時に見えた一面がどうしても受け入れられず、シャットアウトしてしまった経験があります。
完璧主義
相手の気持ちに応えすぎる「完璧主義」もリセットする原因になり得ることがあります。
基本的に、完璧主義を持っている人は、無理をしてしまいやすいです。
周囲からの期待に応えようと頑張るのは良いことですが、頑張りすぎは過大なストレスや適応障害の第一歩でもあります。
適度に休むということや、適度に気を抜くことがそもそもわからないので、いつも120%の力で頑張ってしまうんですよね。
私も、新卒で入社した会社で働いていた時は、休日になっても、出勤日のことを考えて、寝不足になってしまうことがよくありました。
経験上、LINEやSNSの通知を返せなくなり始めたあたりが「危険ゾーン」に片足を突っ込んでいる状態だったなと感じます。
「頼まれたら断れない」「いつも120%の力を出そうとしている」といった方は注意が必要です。
リセット行為はかまってちゃん?

人間関係リセット症候群で検索すると「かまってちゃん」という言葉が出てくることがあります。
「かまってちゃん」とは、常に誰かにかまってほしい、注目されたいという気持ちで周囲を振り回す人のことだそうです。
実際に文字にしてみて思うのですが、おそらくこれは少し違っているのではないかなと思います。
どちらかというと、人間関係リセット症候群の経験者たちは、「スルーしてほしい」といった気持ちを持っている人が多いと思います。
リセット癖がある人は、人間関係に疲れた人や、自己肯定感が低い人が多いです。
むしろ、リセット後は「申し訳ない・・・」という罪悪感でいっぱいだったりします。
特に、勢いだけでリセットしてしまった時は、極端な選択しかできなかった自分を悔やんだり、はっきり言えなかった自分の弱さを恥じたりしてしまいます。
とはいえ、行為自体は、かなりの迷惑をかけてしまうものなので、「かまってちゃん」と言われてしまうのも仕方がないのかな、と思っています。
実際にやってしまったリセット行動
まずは、こちらをご覧ください。
・ネットで繋がった人を「話さない」という理由で削除
・しんどくなったのでTwitterのアカウントを合計5回削除
・しんどくなったのでInstagramのアカウントを合計4回削除
・縁を切りたい人がいてLINEのアカウントを削除
これは、私が大体10年間でやってきたリセット経験です。
この回数が多すぎるのか少なすぎるのかはわかりません。
ただ、このリセットによって本来あるはずだった「人間関係」がいくつか消えてしまったのは間違いないと思います。
複数回にわたってやってしまった「リセット」ですが、根底にある原因はすべて、自己肯定感の低さです。
特に、SNS(主にX)に関しては、noteでも書いたことがあります。
SNSでは、いつもこのループをしていたように思います。
「自分に自信がなくて行動できない」
↓
「行動して成功している人がムカつく」
↓
「嫌な思いをするのなら、自分が消えた方が早い」
(そんなに仲の良い人がいるわけじゃないし・・・)
常に、自分が行動して変わろうとするのではなく、逃げ出すことを選んでいたんですよね。
「話さないから」「縁を切りたいから」といった理由も、最終的に行き着く答えは、自主的に現状を変える気持ちがないことです。
こんなことを繰り返していたら、そりゃ友達もいないよな・・・と納得の結果になってしまいました。
今まで積み上げてきたものを一瞬で消し去れる行動力を、もっと他の部分に活かしていればよかったなと思います。
リセットとASDとの関係性

「白黒思考」の部分でも挙げましたが、ASDの方は人間関係リセットとの深い関連性があるとされています。
ASDだけでなく、ADHDの場合でも同じような傾向があるようです。
実際に「人間関係リセット症候群」と検索すると、関連ワードとして「発達障害」と出てきます。
私はASDと診断される前から、定期的にリセットをしてしまっていたのですが、特性を照らし合わせてみると、納得できる部分がありました。
1つずつ紹介していきます。
極端な思考になりやすい
ASDあるあるだと思うのですが、とにかく白黒ハッキリさせたい!と思ってしまいます。

アンケートは意地でも「どちらとも言えない」を選ばない人間です。
正義感が強いとも捉えられるため、上手く利用できれば良いのですが、人間関係だと悪い影響を及ぼしてしまうことが多いです。
「嫌と言ったら嫌!」が社会では通用しないことは重々承知していますが、この気持ちの制御がASDだとかなり難しいことが多いです。
分かりやすい例としては、人と話していると、過去の嫌な出来事を思い出して「この前、私に〇〇してきた人だ!」と危険センサーが反応することが挙げられます。
大体その理由としてよくあるのが、叱責された経験です。
ASDは「叱責=人格否定」のような思考に陥りやすいので、「以前怒ってきたから、この人は私にとって敵だ」という考えになってしまいやすい傾向があります。
そのため、「敵」だと認識→「リセット」という方程式が出来上がりやすい部分があるのだと考えられます。
人間関係の構築が苦手
ASDの人は、人間関係の構築が苦手という特徴があります。
私の場合は、人との距離感を見誤ることがよくありました。
特にやらかした記憶があるのは、大学での友人関係です。
・「初対面で陽キャを演じるも、後々になって疲れて勝手に不貞腐れる」
・「興味のある話題の時だけ急にキャラが変わったように話し出す」
といったことを平然とやってしまっていました。
今、思い出すだけでも顔から火が出そうになります。
こうした苦い思い出は、しっかりと「黒歴史」に刻み込まれ、自己肯定感の低下に影響してしまいます。
そうした小さなやらかしが続いたことが、定期的なリセットに繋がってしまっていたのだなと思います。
人間関係の必要性を感じていない
ASDの特性として時々挙げられるのが、人間関係を構築することの必要性を感じていないという考え方です。
こうした考え方が根底にある場合は、「連絡を取らないので消しても問題ない」と思って、リセットに踏み切ってしまうことが考えられます。
私の場合、学生時代は「小学校」「中学校」「高校」「大学」という環境の変化を1つの区切りだと認識していて、卒業する度に小さなリセットを繰り返していました。
もともと友人が少なかったこともあるのですが、卒業後に「前の区切りの人たちと連絡を取る」という選択肢を持っていなかったのです。
そのため、卒業をすると、友人関係はまた1からやり直しという思い込みを持っていました。
大げさに言うと、「その区切りを過ぎると、友人から他人に戻る」という感覚です。
文字にすると極端な思考ですが、当時の私は本気でした。
同じ場所で一緒に過ごすこともないので、単純に情報交換の必要性がないと判断してしまうのです。
ASD特有の見通しの甘さがあるのかもしれませんが、なぜか卒業後も仲良くするというビジョンが全く想像できていなかったように思います。
そんな考え方のせいか、リセットする前に自然消滅してしまった経験も沢山ありました。
今思えば、「どうせ連絡先を持っていても連絡が来ないから」というネガティブな考えも影響していたような気がします。
今、できることって?

ここまで原因について書いてきましたが、問題はここからです。
じゃあ、どうやったら辞められるの?ということです。
わかります。私だって治したいです!
でも、残念ながら、私自身もリセット癖を直せたわけではないので、偉そうなことは言えません。
しかし、1つだけ「解決策」を挙げるとしたら、「自分に許可を出してあげる」ことだと思います。
自己肯定感を上げることは、簡単ではありません。
勢いだけで「明日から絶対にリセットしないぞ!」と完璧主義を発揮したら、それこそ本末転倒です。
でも、自分に優しくしてみることは、意外と難しくありません。
「疲れた!無理だ〜!」と思った時は、休んでもいいのです。
LINEを返さない日があってもいい。
ストーリーを非表示にしてもいい。
自分に許可を出すだけでも、心は少し軽くなると思います。
最後に
人間関係リセット症候群に悩まされている人は、「自分に自信がない」「人間関係に疲れてしまっている」ことが原因になっている場合がほとんどです。
そして、その根っこには「自己肯定感の低さ」が大きく影響しています。
一つだけ言っておきたいのが、ASDでなくてもこうした傾向を感じる人はいるということです。
私はASDの診断を受けていますが、同じASDの方でも、持っている思考や、その度合いはさまざまです。
本文ではASD特性との関連性をいくつか挙げていますが、誰でも「人間関係に疲れた」「一人になりたい」と思うことがあると思います。
もし、周りに迷惑をかけていると理解しているのにもかかわらず、辞められないという場合は、メンタルが疲弊してしまっているのかもしれません。
何度も言いますが、私自身も完全にリセット癖を辞められたわけではありません。
「何を偉そうに言ってんだ」と思われても仕方がない立場です。
それでも、一度心を病んでしまった人間として、これだけは言わせてほしいです。
完璧主義な方ほど、自分を過度に追い込んでしまう傾向があります。
もし、今、人間関係に悩んでいたとしたら。
どうか一度、自身の心の声に耳を傾けてあげてみてください。
まずは、自分を労ってあげること。
実際に動き始めるのは、そのあとで構いません。
一緒に頑張っていきましょう。
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