こんにちは。栖山 依夜(すやま いよ)です。
私は2024年にASD(自閉スペクトラム・アスペルガー)の診断を受けました。
ASDの人は、人口に対して20~40人に1人いる可能性があると指摘されています。
近年、急激に知られるようになったASDですが、目に見えない障害であることから、当事者はもちろんのこと、周囲の人も「しんどさ」を抱えてしまいやすいという問題があります。
しかし、そうした問題を抱えているのにもかかわらず、
「ASDかもしれないが、どこで検査を受けられるのかがわからない」
「病院の予約が面倒くさそう…」
といった理由で、検査を受けることを諦めてしまう人も少なくありません。
そこで、実際に検査を受けた経験のある私が、ASDと診断されるまでの流れについて紹介します。
当事者の視点で、「障害」を打ち明けた時に嬉しかった反応も紹介しているので、よければご覧ください。
◇ASDの検査の受け方を知りたい
◇自分はASDかもしれないと思っている
◇身近にASDと診断された人や、そうかな?と思う人がいる
私が、自分がASDに真剣に向き合うことになったのは、通院していたメンタルクリニックでのカウンセリングがきっかけでした。
検査を受けて、良くも悪くも私は人生が大きく変わることになりました。
診断された今だから言えることではありますが、もっと気軽に検査を受けてみてもいいのではないかなと思います。
診断を受けるまでに気をつけること
診断を受けるまでにも、いくつかの注意が必要になります。
事前に対処できる問題がほとんどなので、下調べをしておくことが大切です。
ASD(自閉スペクトラム)には、大きく分けて、「積極奇異型」「受動型」「孤立型」の3タイプ、派生した「尊大型」「大仰型」2タイプの、計5タイプがあります。
タイプによって、言動や雰囲気が異なる場合も多いため、本文中の文章が必ずしも全てのASDに当てはまるというわけではないことを、ご了承いただければと思います。
私は「受動型」を自認していますが、これらは、医師から正式な診断が下るものではありません。
受動型についての記事は、こちらからお読みいただけます。
受けられる場所に注意!
発達障害と診断されるためには、
専門の医師がいること
心理検査ができる病院であること
が必須条件になります。
簡易的なテストができる病院もありますが、専門医が在籍していない場合は、診断が貰えないので要注意。
他に相談したいことがある場合や、カウンセリングを受けたいという場合は問題ないのですが、発達障害の診断だけが欲しいという方は、事前にしっかりと確認が必要です。
「クリニック名 心理検査」で検索すると、検査の有無や具体的な持ち物、料金などが記載されているサイトもあるので、一度、調べてみることをおすすめします。
ちなみに、私が最初に通っていた病院は、発達障害の専門外でした。
てっきり、メンタルクリニックに行けば「発達障害の検査」ができると思い込んでいた私は、かなりショックを受けることとなりました・・・。

下調べが命!!
今、通っている病院から転院したい場合は注意!
現在通っている病院で検査ができず、転院をする場合は、通院中の主治医による診療情報提供書が必要になります。
私は、セカンドオピニオンを行ったので、診療情報提供書を貰ってから他病院に移りました。
よく、「セカンドオピニオンをしたい」旨を主治医に話すと、嫌味を言われたり、キレられたりするのではないか…?という心配の声を耳にしますが、全く問題ありません。
私の場合は、「カウンセリングをする中で、ASDかもしれないと思ったので、ちゃんと検査を受けたい」と言って、書類を書いてもらいました。
気長に待つこと!
そして、もう一つとても大切なことがあります。
それは、とにかく待つことです。
受診、検査、カウンセリング、全てにおいてメンタルクリニックは、とにかく予約が取れません。
私が現在、通っている病院に初めて検査の予約をした時は、2ヶ月以上待ちました。
数ヶ月先になるどころか、抽選になって最初の予約すら取れないということもあるので、「予約は取れないもの」と思っておくことが大切です。
自分の身体のこととなると、どうしても不安になったり、イライラしてしまったりするかと思いますが、焦らないことが大切です。予約はいつかは必ず取れます!
検査について
私はASDの検査を受ける際に、他の検査もいくつか受けました。
受けたのは以下の4つです。
①WAIS-Ⅲ(ウェイス)
②MSPA(エムスパ)
③PFスタディ(ピーエフスタディ)
④ADOS(エイドス)
発達障害を測るテストの中から、ADHDに関するものを抜いた検査が上記の4つになります。
私はADHD傾向はないと自己判断していたので、検査は受けませんでしたが、この部分は個人差があるところですので、医師としっかり話し合って決めてくださいね。
また、検査結果だけでASDやADHDという診断が下るのではなく、生育歴や現在の状況なども加えて総合的に判断します。
検査を受けたからといって、必ずASDと診断されることはないので、注意が必要です。
どんな検査なのか?
個室に案内され、心理士さんと一対一の状態で行われます。
用意された道具を使ったり、問いに答えたり、心理士さんと話したりといったものが多いです。
雰囲気もとても和やかで、どちらかといえば、「検査」というより「面談」という言葉が合っているような気がしました。
検査によっては少し難しいと感じるものもありますが、言葉に詰まったり、手が止まったりしてしまっても全く問題ありません。
何よりも、わからないことがあれば、正直に聞くことが大切です。
自分の力を最大限に発揮できずに、検査を受けてしまうと、結果に影響が出てしまう可能性があるためです。
私も何度も質問してしまいましたが、優しく教えてくださいました。

わからないことは恥ずかしいことではないよ!
所要時間はどれくらい?
検査によりますが、大体の所要時間は以下のようになります。
WAIS-Ⅲ(2時間)、MSPA(90分)、PFスタディ(20〜30分)、ADOS(1時間〜1時間半)
私の場合は、複数の検査を一気に受けたので、5時間ほどかかりました。
複数受ける場合は、途中で1時間程度のお昼休憩を挟むことになるので、近くに飲食店や喫茶店、コンビニなどがあるかどうかをチェックしておくことをおすすめします。
費用はどれくらいかかる?
検査によって、保険適用されるものとされないものがあります。
私が検査をした時は、ADOSのみが保険適応外でしたが、それだけでもかなりの出費になりました。
検査代でもお財布に厳しいですが、さらに追加で検査予約料やフィードバック面接、検査報告書代なども追加するとなると、ある程度のまとまったお金が必要になります。
特に高いのが、「検査報告書」です。
数枚の紙で1万円超えと決して安くないのですが、検査結果と詳しいフィードバックが手元に残しておけると思うと、意外と高くはないような気もします。私的にはとてもオススメです!
総額4万円ほどあれば問題ないと思いますが、事前に病院に行く機会などがある場合は、いくらほどかかるかを聞いておくと安心できると思います。

クレジット未対応の病院もあるので注意してね!
結果はいつわかる?
診断結果がわかるまでには、約1ヶ月かかりました。
私は検査報告書を希望していたので、担当心理士さんからの説明を受けました。
希望していない場合は、診察時に医師から結果を聞くことになると思います。
説明はかなり詳しく、自分の苦手とする部分や目立つ特性、話した内容から推測できる考え方のクセなどを指摘されます。
フィードバックだけでも1時間程度かかったので、これだけでも情報量の多さが伝わると思います。
私の場合は、心理士さんの見解では「ASD傾向はない」という診断でしたが、医師の見解で、最終的にASDと診断されました。
私のように、検査結果と医師の判断が異なる場合もあります。
最終的な診断をするのは医師なので、報告書の内容は「自分にはそういう傾向があるんだなぁ」程度に思っておく方がいいかもしれません。
ASDと診断されたら?
私は「ASD」と診断された時、特に驚くようなことはなかったのですが、診断後に少し困ったことがありました。それが、障害者手帳の申請と周囲へのカミングアウトです。
障害者手帳を申請するかどうかを決める
最初に悩むのが、障害者手帳の申請だと思います。
結論から言うと、私は手帳を取得してよかったと思っています。
障害者手帳は、基本的に取得しておいて損することはほとんどありません。
手帳を持っていると、公共交通機関の運賃が最大半額になったり、公共施設の料金が半額になったりといったサービスも受けることができます。
また、「手帳を持っていることが、就職に影響するのでは?」という声もよく耳にしますが、クローズ就労という方法もあります。
これは、障害者手帳を持っていることを会社に言わずに働くということ。
つまり、手帳を持っていても、必ずしも障害を打ち明ける必要はないということを意味します。
この部分は、人によって考え方が大きく異なってきますので、どれが正解といったことはありません。自分が許容できる範囲を大切にして、私の話は参考程度にしていただければと思います。
手帳の申請に関しては、1点だけ注意があります。
それは、「障がいの原因となった傷病について、初めて医師の診断を受けた日から6か月以上経過していること」が必須条件となることです。
6か月を過ぎていない場合は申請ができないので、しっかり確認してから申請してくださいね。
周囲へのカミングアウトはどうする?
これは私の経験上でのお話になりますが、無闇に話さないに限ります。
迷った場合は、まずは家族などの生活を共にする人だけに留めておき、そこから伝える人を吟味していく方法が一番安全です。
中には、発達障害に対してマイナスイメージを持っている人もいます。
特に、会社などでは、仕事が絡んでくるということもあり、カミングアウトをした途端に態度を変えてくる人もいるかもしれません。
言ってしまったあとに、やっぱりなかったことにする、はできません。
デリケートな問題になりますので、じっくり考えることを強くオススメします。
カミングアウトされた時のベストな反応、NG反応
次に、カミングアウトされた側についても考えてみましょう。
突然、「私は発達障害なんです」と打ち明けられたら?
親の立場、上司の立場、友達の立場と、さまざまですが、まず最初に浮かぶのは「ベストな反応って何?」ではないでしょうか。
「軽く流しても良いのか?」「サポートに回れば良いのか?」「労えば良いのか?」
きっと、いろいろ悩んでしまうと思います。
私も、打ち明けられた側に立った時は、とても悩んだ記憶があります。
当事者になってみて思うのは、
「そうなんだ」と軽く流してもらえるのが一番嬉しいということです。
私はASDの診断を受けた際、家族に電話で伝えました。
何を言われるのかと内心ドキドキしていたのですが、その時の家族の反応は、「そうなんや!」と拍子抜けするようなものでした。
“障害という言葉を重く受け止めず、ただただ目の前の事実を受け取ってくれる。“
という反応が、これから「障害者」として生きていく私にとっては、すごくありがたかったです。
逆にNGなのは、以下のような障害者を突き放す言葉です。
「配慮してアピール?」「で、結局どうしてほしいの?」「障害ちゃん(笑)」
突然「障害者」と認定されて、困っているのは当事者も同じです。
嬉しい言葉と辛い言葉、どちらも経験した身としては、障害を持っていることを揶揄したり、できないと決めつけられたりすることが、一番辛い気持ちになります。
普段通り接してくれるだけでいいのです。
「スペクトラム」ということを忘れないで
最後に、自閉スペクトラムという言葉について説明して、この記事を締めようと思います。
少し前まで、「自閉スペクトラム症」は「広汎性発達障害」という言葉で、説明されていました。
急にカタカナが出てきて、よくわからないと思っている方も、きっと多いんじゃないかなと思います。
この「スペクトラム」には、「連続体」「範囲」という意味があります。
簡単にいうと、境界線や範囲が明確ではない状態がずっと続いているということです。
つまり、「スペクトラム」は白なのか、黒なのか、といったような、どちらか1つという答えがあるのではなく、傾向が強いのか、弱いのか、といった捉え方に近いのです。
もし、これを読んでくださっているあなたや、あなたの身近な人が「ASD」だったとしても、その傾向の強さは人それぞれです。
発達障害だからダメなんてことは絶対にありません。
そのことを、どうか忘れないでいてほしいと思います。